● 開放醗酵
すべてが開放状態で醗酵作業が進行する醸造方法で、日本酒造りの大きな特長の一つとなっている。密閉しない・殺菌しない・いつも空気に触れている、といった状態を指す。大変リスクの多い発酵方法であるが、そこにはいろいろな先人の知恵が活かされている。
● 香り吟醸
どちらかというと香りに主体を置いて造った吟醸酒。
● 鏡面
究極の酛といわれるもので、完璧な酛が造られた場合、その表面には濁り一つない鏡のような大きく透明な泡ができると言い伝えられている。
● 掛麹
醪を増量するときに使われる麹。掛米同様、三段仕込み(初添・仲添・留添)のときに用いる。酛麹に比べ、栄養分が少ない。だから、製麹時間も短い。
● 掛け流し
浸漬の一つの方法。米のカリウムを大量に流出させることができる。浸漬タンク下部より水を注入し、タンク上部より水を流し出す。通常10分から30分程度の時間行われる。ただし、麹用および酛用のお米には行わない。
● 掛米
醪を増量する時に使われるお米。掛麹同様、三段仕込みの時に用いる。
● 頭
杜氏と蔵人の間に位置する人。杜氏の女房役。一般的には、醪担当主任を兼任している。ただし、杜氏の流派や酒蔵の規模によってはこのポジションがない場合もある。
● 加水調整
日本酒を水で割って、アルコール度数を調整すること。
● 粕歩合
醪を搾ったときに、残った酒粕の量のこと。仕込みに使った白米の量に対して、日本酒になったものと酒粕になったものを、酒粕の方から見て比率で表したもの。粕歩合の%数値が大きいほど、酒粕として残った量が多い。
● 合併
目的とする酒質にするため、搾った後の日本酒を各々ブレンドすること。
● 釜屋
お米を蒸す作業一切を取り仕切る責任者で、酒造り三役の一人。お米が完全に蒸し上がったかどうかで、その後の麹や掛米などの質に影響が出るため、長年の経験と勘が必要とされる。
● 辛口
糖分が少なく、酸が多い日本酒。
● 枯らし
精米による熱を逃がすこと。また、精米によって失った水分を取り戻すこと(御米の種類や精米歩合によって異なるが、精米後約一月寝かせておくと、水分が多少戻ってくる)。さらに、出麹後、一日放置することも指す。
● 燗上がり
お燗をすると美味しくなる日本酒。
● 寒仕込み
寒い時期に入ってから仕込んだ日本酒のこと。この季節は、特に低温醗酵が必要な吟醸酒や山廃酒の仕込みの時期でもある。雑菌が少なく、引き締まった麹が造れるなど、安定した酒造りができる時期であるため、良い日本酒はだいたいこの時期の仕込みとなる。同義語として、寒造りがある。
● 生一本
すべてを自社(単一酒蔵)で造った(自醸の)純米酒を指す。灘だけの専売特許ではない。
● 木香
通常、杉の精油が日本酒についた良い香りをいう。樽酒などはその良い例である。
● 利酒
日本酒の色や香りや味を、実際に口に含んで調べること。
◎ 利酒で高い評価を受けた日本酒がすべて旨い日本酒とはいえない。利酒はあくまでも<中間テスト>である。本当に良い日本酒とは、利酒で高い評価を受けて、飲んで実際に旨く、酔い心地も良く、酔い醒めもスッキリ、という日本酒である。
◎ 利酒をする人や蔵元・杜氏など日本酒の善し悪しを判断する人は、正確な三覚(視覚・臭覚・味覚)が要求される。天性のものに加え、適切な訓練を経た者でなければ判断できない。そのためには、良い日本酒の条件(知識)を知ることが第一であるが、利酒の場合、その日本酒の持つ良い点よりもむしろ欠点を探しあてる眼の養成、そして日本酒の味や香りを表現するボキャブラリーと表現技術の習得も欠かせない。また、日本酒にはいわゆる「五味」の他に「旨み」という重要なポイントもあり、そのいうに言い難い味の感性も必要といわれる。
●貴醸酒
仕込み水の代わりに、お酒を使って造ったもの。あるいは、いったん搾った日本酒に再び新しい麹を入れて醸造した日本酒をいう。とっても濃醇で甘口な日本酒。
● 基調香
日本酒の基本的な香りのことだが、具体的にいうのは難しい。
● 生酛
酛内に乳酸を得る方法の一名称。酛を造る時、既成の乳酸(醸造乳酸)を用いず、天然(自然)の乳酸菌を酛内で育成して、乳酸を造らせ、そこで酵母を添加して培養する方法。この酛造りには、コストと経験が必要とされる。この酛を使って造られた日本酒の味は、ハードで腰があり、味くずれしないなどの特徴があり、純米酒などによく用いられる。
● 協会酵母
日本醸造協会が各酒蔵に頒布している酵母のこと。現在、6~7号、9~13号のナンバリングされ、頒布されている。(8号は欠番)
● 切り返し
麹を造る際、その途中で行う品温調整のこと。山田錦を原料米として使用した場合は、必ずこの作業が必要とされる。よって、この作業を面倒がる酒蔵は山田錦を使う資格はない。
● 吟醸酒
米・米麹、そして香味調整の目的でごく少量の醸造アルコールを使用し、吟味(低温製麹・低温醗酵・長期醗酵・長期熟成)して造った日本酒。
● 首吊り
上槽の方法の一つ。槽や機械を使わず、醪を酒袋に入れ、ハの字型に吊るして無圧で自然に滴り落ちるように搾る方法。「袋吊り」ともいう。
● 蔵人
酒蔵で働く人の総称。
● 蔵元
通常、酒蔵(メーカー)の社長(オーナー)のことを指す。また、酒蔵そのものをさす場合もある。
● 栗香
出来上がった良い麹に出る香り。栗を焼いたような香ばしい香り。
● 原酒
通常、日本酒は加水調整(割水)によってアルコール度数を調整するが、それを一切しない日本酒をいう。よって、アルコール度数は高めである。
● 原醪
醸造アルコールなどを添加する前の醪そのもののこと。
● 麹
お米に麹菌を育成させた米麹のこと。お米が持っているデンプンをブドウ糖(糖分)に変える役目。
● 麹菌
カビの一種。日本酒造りには、黄麹菌を用い、その麹菌が造る糖化酵素を利用して、デンプンをブドウ糖(糖分)に変えてやる。
● 麹バナ
醸出したばかりの新酒特有の麹臭い匂いのこと。フレッシュな香りで、新酒のまだ丸味のない味を<若い>とか<荒い>という。「新酒香」とか「新酒バナ」ともいう。
● 麹室
麹を造るための高温多湿な部屋。断熱材と二重扉なぢで密閉され、雑菌の侵入防止と温度保持がされている。麹室には多額の費用が投下されていて酒蔵の財産と呼ばれる。
● 麹屋
麹造りの一切を取り仕切る責任者で、お酒造り三役の最高位に位置する人。お酒造りは<一に麹>といわれるほど、麹造りは大切なことで、良い麹ができればお酒造りの七割は終了といえるほどである。代師ともいう。
● 口中香
利酒で、口に含んだまま、花から息を抜いたときに残る香り。「含み香」ともいう。
● 酵母
糖分をアルコールに変える単細胞微生物。いろいろな種類がいて、それぞれ性質が違い、それが酒質に影響を及ぼすため、酒蔵では目的の酒質にあった酵母を使い分けている。
● 酵母臭
酵母の自己消化によって生じる臭い。
● 酵母仕込み
酛立て(酛を造ること)をせず、酵母の菌体のみを使って仕込んだ日本酒。培養酵母(液状・泥状・固形・乾燥)と乳酸(醪仕込みの)初添の水麹時に添加して、仕込む方法。酛の製造工程が省略、あるいは簡略化できる。
● コク
日本酒内に、各種の味覚物質が豊富にあり、しかもそれらがほど良く調和している状態をいう。調和の取れた濃醇な味「ごくみ」ともいう。
● 古酒
長期熟成して、独特の味を出した日本酒。酒蔵ではBY(醸造年度)が変わるとそれ以前に造られた日本酒をすべて古酒と呼ぶ。使用原料米・酒質(本醸造・純米・吟醸)など、造りの条件によって、またその年々の原料米のでき具合によって、何年古酒が最良か、その判断は難しい。古酒は一つの<実験>である。
● 小玉泡
醗酵している醪表面の泡の一つの状態をさす。玉泡の最後の状態で、玉状の泡が最も小さくなった状態。
● 五百万石
新潟で開発された酒造好適米。通常、口語では、<五百>と略して使われる。全酒造好適米の約半分を占める。
● 五味
日本酒の味覚を表現した言葉。「甘味・辛味・苦味・渋味・酸味」という。
● ゴム臭
仕込み中、ゴムホースなどより移るゴムの臭い。
● 米麹
お米で造った麹のこと。単に「麹」という。